遺産分割協議書とは
遺産分割協議とは、相続人全員で「被相続人の遺産をどのように分配するのか」を決める話合いのことをいいます。
分配内容や方法は、相続人全員の合意があれば自由に決めることが可能です。
遺言書が残されていない場合は、相続手続きをする前に、遺産分割の話合いが必要になります。
そして、その協議で合意した内容を文書にしたものが「遺産分割協議書」です。
遺産分割協議書は、各種の相続手続きで必要とされ、さらには、すべての相続人による合意の内容を証明し、蒸し返しを防ぐ役割があります。
被相続人が遺言書を残していたり、相続人が1人のときは、原則分割協議の必要はありません。
遺産分割の具体的な手続
被相続人について遺言書が存在していないことが明らかになったときは、相続人同士で遺産の分け方を話し合って決めることになります。相続人全員が一同に会して話し合うのが実質的な協議ができると考えられますが、協議の方法は相続人の自由に任されています。
実際には、相続人の数が多かったり、遠隔地の相続人がいたり、全員が集まることが困難なことも多く、電話やメールなどを使い協議を進めることが必要となります。
あらかじめ遺産分割協議書(案)を作成してから、代表相続人が各相続人に打診し、合意形成を図る方法もあります。
当事務所では、(案)を作成する段階からサポートします。
遺産分割について合意ができた場合、協議書を作成し、相続人全員が記載内容を承認して署名・押印すれば「遺産分割協議書」が成立します。
遺産分割協議には、必ず実印を使用し、実印であることを証明するため相続人全員の印鑑登録証明書を添付します。
遺産の中に不動産がある場合には、遺産分割協議は、「相続を証する書面」となり、遺産分割による相続登記をするときに必要とされます。
登記以外にも、被相続人名義の預貯金の名義変更や相続税申告の際にも必要とされる場合があります。
遺産分割協議書作成における注意点
遺産分割協議書を作成する場合に、注意すべきことは次のとおりです。
1. 誰がどの遺産を取得するのか明記する。不動産は、登記事項証明書で特定を完全に
する。
2. すべての相続人が1通ずつ所持できるよう、正確に必要部数を把握します。遺産の
中に不動産がある場合は、法務局提出用として不動産のみ記載した遺産分割
協議書を作成してもよい。
3. 遺産分割協議書作成後、あらたな相続財産が発見された場合に備え、誰にどう
分配するのかも決めておく。
4. 遺産分割協議書が、複数枚になる場合は、各用紙間に相続人全員の契印を押す。
5. 住所は、印鑑登録証明書のとおりに記載する。
6. 署名はワープロでもよいが、自書が望ましい。実印での押印は必ず必要、認印は
不可。
7. 状況によっては公正証書にすることも検討、後のトラブル発生の可能性が大幅に
減らせる。
家庭裁判所に申立てが必要な場合
次の場合では、事前に、家庭裁判所へ申立てを行わなければなりません。そのため、遺産分割協議は長期間を要します。
1. 相続人に未成年者がいるとき
父が死亡し、母と未成年の子が相続人である場合などです。この場合、母と子の
利益が相反するため、母は子を代理して協議することはできません。母は子のため
に、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。
未成年の子が二人いる場合には、二人についてそれぞれ「特別代理人」が必要
になり、選任された特別代理人が未成年者に代わり遺産分割協議に参加します。
2. 相続人に精神上の障害など判断能力が不十分な方がいるとき
認知症のように、物事を正しく判断し、その結果を認識することができない方に
とっては、協議で、自分の権利を行使するこが困難と考えられています。
従って、家庭裁判所に成年後見人の申立てを行い、選任された成年後見人が遺産分割協議に
参加します。
3. 相続人に行方不明者がいるとき
不在者財産管理人の選任を申立て、選任された不在財産管理人が、不明の相続人に代
わり遺産分割協議に参加します。
当事務所では、相続人調査の段階から遺産分割協議書の作成をサポートします。
遺産分割協議にはすべての相続人の参加が必要です。相続人の一部が漏れていれば、その遺産分割協議書は無効になります。
そのため被相続人の戸籍を出生までさかのぼり、被相続人の身分関係を確認し、他に相続人がいないことを証明しておかなければなりません。